~卒業生の門出を祝し、特別企画『軌跡』として各部を追った記者が卒業までの軌跡を辿ります~
「日本一の胴上げを」
「安藤監督を胴上げしたいんです」。
2018年1月に行った、新チームの座談会での新主将の平山快(体4)の言葉に、副主将の國谷翔汰(政4)、ピッチャーチーフの吉川雄大(体4)、風紀委員の石塚連太朗(体4)、主務の杉山僚(文4)は静かに頷いた。
▲(後列右から)國谷、平山快、石塚
(前列右から)吉川、杉山
新チーム発足当時、4季連続で首都大学リーグ戦での優勝から遠ざかっており、「今年こそは、今季こそは勝つしかない」と、勝利へ燃えていた幹部たち。「4年生のまとまりには自信があるので、下級生も巻き込んで絶対に日本一になる」。
3年春から4番に座る平山快は、「安藤強監督(東海大職員)は成績が出ないときも自分を信じて4番に置き続けてくれた。結果で恩返ししたい」といい、國谷は、「選手たちの自主性を伸ばしてくれる練習方針で、みんなのびのびと野球を楽しんでいる」と口にする。座談会中に急きょスローガンを決めることになったが、安藤監督の名前でもある“強”と、安藤監督がよく口にする「初回や初球、走り出す1歩目など、1にこだわろう」という言葉から、「強~1への拘り~」とした。
▲安藤監督は今年度春から試合前のシートノックも自ら行うようになった。「選手の状態がよりわかるようになった」という。
感謝の気持ちを勝利につなげるべく、迎えた春季リーグ戦。1点差の接戦をいくつも制し、勝負強さを見せた。ピンチの場面でのリリーフを任された吉川は、「守備陣を信じて投げ込むことができる。安心して投げ込めるチーム」と振り返る。
最終節の武蔵大戦では、1回戦に快勝。2回戦では延長戦へもつれ込んだが、藤井健平(体3)に劇的なサヨナラ本塁打が生まれた。ベンチの選手全員で藤井を迎え、スタンドからはカラーテープと歓喜の声が降った。この瞬間を平山快は、「4年間の大学野球で一番思い出に残っている光景」と話す。
ようやくつかんだリーグ戦優勝。念願だった安藤監督の胴上げをし、安藤監督や選手の目には涙が浮かんでいた。
▲2年ぶりのリーグ優勝は、70回目となる節目の優勝となった
安藤監督は、「幹部を中心に、選手たちが一丸となってよくやってくれた。ありがとうと言いたい」。
全日本大学選手権大会では初戦敗退。悔しさを胸に掲げた目標は、「リーグ戦全勝優勝で明治神宮大会を制し、安藤監督を日本一の監督として胴上げする」こと。秋季リーグ戦では2節まで順調に連勝。しかし第3節で筑波大に対し2戦連続完封負けを喫した。リーグ戦での同一カードの2戦連続完封負けは2011年春以来。安藤監督は、「4連勝で油断ができたかな」と唇をかみ、選手たちは言葉少なだった。
しかし次節、見違えるほど空気を一新した選手たちの姿があった。
▲ベンチからもスタンドからも活気ある声が飛んでいた。
「悔しい思いをしたことで、全員の勝利への気持ちが強くなった」。ミーティングや新たな打撃練習も取り入れたことも功を奏し、帝京大に対し2連勝して優勝への望みをつないだ。
最終節では2回戦で平山快が、「人生初」の満塁弾を放つなど、武蔵大を突き放して2季連続優勝を果たした。安藤監督は、「筑波大戦の連続完封負けから、もう負けられないと気を引き締めてやってきた。連覇を達成して、これがみんなの力だということを証明できた。強い東海のメンタリティーが復活してきたかな」と笑顔を見せた。平山快は、「春季リーグ戦では優勝の喜び方を忘れていたが、今季は試合の流れも喜び方も段取りができていて素直に喜べた」と喜びを表現した。
2年ぶりに出場した関東地区大学選手権大会では上武大に0-2で敗れる。涙を流す後輩たちを抱きかかえたのは、4年生だった。
安藤監督の日本一の胴上げは、後輩たちに託された。
▲海野の肩を抱く平山敦
1年間主将を務めた平山快は、チームメートから、「安藤監督と話していることが似てきた」と言われることがあるほど、安藤監督と密にコミュニケーションをとってきた。「この4年間で、がむしゃらに練習をやるのではなく、体の使い方を研究し頭を使いながら練習をするようになった。安藤監督は練習を強制するのではなく、足りない部分の補強などのびのびと練習をさせてくれた。そういうことが頭を使った練習ができるようになったことにつながったのだと思う」と安藤監督への感謝を述べた。安藤監督は、「3年時の秋季リーグ戦の日本体育大戦で平山快が死球を受けて交代し、とても悔しそうにしていた。その時の表情を今でも覚えている。気持ちが強い選手なのだなと思っていた。チームを献身的に引っ張ってくれて、感謝しかない」と語った。
今年卒業する4年生は36名(選手31名、学生コーチ2名、マネージャー3名)のうち、野球継続者は17名と例年と比べとても多い。「大学入学時は卒業後も野球を続けられるなんて思わなかった。安藤監督が『あきらめるな』と背中を押してくれたおかげ」と多くの選手が口にしている。
3月25日に行われた硬式野球部の懇親会では、多くの4年生が集まった。来春入部する新1年生に向けて、「伝統ある東海大で日本一をとれるよう、がんばってください」とエールを送った。
▲集まった卒業生たち
思いはタテジマのユニフォームに引き継がれていく。新主将に就任した長倉蓮(体3)は、「リーグ戦で2季連続優勝を果たし、大学日本一へのスタートラインに立てたことで、全員の意識が変わった。大学日本一という目標が言葉だけのあいまいなものではなく、より現実味を帯びて明確になった」と話す。来年こそ、日本一の胴上げを。
【あとがき】
ブログ冒頭に書いた幹部座談会。記者には強く印象に残っています。当時2年生の記者は担当となってから未だリーグ優勝の取材を経験していませんでした。しかし、座談会で幹部一人ひとりの決意を聞き、「今年は優勝が見れるかもしれない」と鳥肌が立ちました。
多くの試合へ足を運び、実際にリーグ優勝を果たした安藤監督や選手たちを見て、その思いの強さに尊敬の念が強くなりました。
4月から4年生になる記者は、硬式野球部を担当するのも最後の年となります。チームの喜怒哀楽や一つひとつのプレー、言葉を多くの方々に全力で発信していきたいと思います。そして卒業生の皆さんの悲願でもある日本一の胴上げを、写真に収めたいと思います。
卒業生の皆さんのさらなる活躍を心より応援しています。(記事、写真=南雲)
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